あなたに優しい灯火を。光を。希望を。
彼と私と親友と 3話
結構衝撃的な告白を聞いた日の放課後。
私は陸上部の練習をぼんやりと眺めていた。
美羽は休憩中なのか、部員の男の子と一緒に木陰に座っている。
・・・おそらく彼が、例の男の子なんだろう。
割と笑顔が多いし、明るそうだ。
顔にある痛々しい痣さえなければ、いたって普通だ。

「・・・なんとかしてほしいっていっても・・・ねぇ」

独り言を呟く。
彼にとって、本当に悪い事なら助けてあげて、なんて言われても、私と彼は、他人同士だ。
友和くんとみたいに長い付き合いがあるわけじゃないし、美羽とのように友達ってわけでもない。
彼と何の接点もない私がいきなり話しかけたって、心を開いてくれるわけがないし、下手すれば変な印象を与えてしまう。

まあ、そんなことを考えていたのは、最初のほんの数分だったけど。
私はスポーツをしている人の姿が好きだ。
憧れもする。
どんな競技でだって、練習を見ていればだんだん思考が止まってくる。
練習を見るというよりは、見とれる、かもしれない。
一度友和君に、どんな顔して練習見てるか聞いたことがあるけれど、その時の答えは、「何かに恋してる顔」らしい。
クラスメイトにも私の顔はそう映るみたいで、陸上部に好きな男でもいるのかとよく聞かれる。
そんなにスポーツが好きならなんで部活していないの?って話だけど、そこには少し深い理由がある。
一番の原因は、中2の時に交通事故にあって、大けがを負ったこと。
美羽と同じく私も昔は陸上部所属だったんだけど、交通事故で当時は左足が使い物にならなくなった。
今はリハビリのおかげで日常生活に支障はないけれど、全力で速く走る、なんてことはできなくなってしまった。
リハビリしても陸上続けるのは厳しいってお医者さんに言われた時は、ほんとにボロボロだった。
毎日毎日、病院のベットで泣いていた気もする。
けれど、そんな私に美羽は言ってくれた。

「すっと、亜希が横で一緒に走ってるのを思い浮かべながら、私は陸上を続ける。亜希の分も、ずっとすごい選手になる」

その日が涙のピークで、それからは笑うことの方が多くなった。
人間て言うのはどんなに落ち込んでいたって、単純なことで立ち直れたりしてしまう、面白い生き物だと思う。
私が単純すぎるだけかもしれないけれど。
で、2番目の原因は、簡単に言うと友和くんとの時間を増やすためだ。
2人とも部活をすれば、どうしても帰る時間が違ってくる。
友和くんは割とはやく部活を切り上げるタイプだから、余計だ。
だから、私は彼を待っている間に陸上の練習を見て、そんな私を、友和くんが拾っていく。
私が高1のときからの日課だ。
いつだって、友和くんがそばにいる。
こういうことも、私の笑顔に変わっていってると思っている。
私が立ち直れたのは、美羽と友和くんのおかげだ。


とりあえず、友和くんが迎えに来てくれるまでに、彼と知り合い程度にはなっておこう
それとなしに美羽に近づいて、美羽に彼を紹介してもらう感じで。
美羽ならきっと、空気読んでくれるはず・・・
内心ドキドキしながら、私は2人に近づくと、2人とも私に気付いたようだ。
お願い美羽、KYじゃないって信じてる・・・
そんなことを念じながらさらに近づく。
けれど意外なことに、先に口を開いたのは美羽の隣りに座っていた彼だった。

「ひょっとして、早野さんですか?」

私も、彼の隣りの美羽も、相当驚いていた。

「隼人君、なんで知ってるの?」

美羽が彼に尋ねる。
うん、私も知りたい。

「中1の時に、試合会場で一目惚れしたんです」

いきなりの爆弾発言を、彼はさらりと笑顔で放った。

「早野さんが怪我で引退したって聞いて、もう二度と会えないかなってあきらめてたんですけど・・・ラッキーでした。前よりも美人になった早野さんに会えて」

彼の言葉は機関銃のように私の心を叩き揺らしていった。
ただたんに慣れていないだけなんだけど。
けど、私が成長したのは、彼の言う外見だけじゃなかったらしい。

「ごめんね、私にはだーいすきな彼氏がいるから」

ここまで大々的に宣言するのは初めてかもしれない。
美羽が驚きっぱなしだ。彼にも私にも。
注目の彼は少し残念そうに、けれどすぐに明るい表情に戻って言った。

「あ、申し遅れました。高嶋隼人です。中距離メインに走ってるんで、アドバイスとかあったらお願いしたいです。俺が早野さんに惚れたのは、外見だけじゃないんで」

「だよねー、亜希の走ってるフォーム、すっごいキレーだったもんね!」

ここで美羽が会話に割り込んでくる。
っていうか、私はもう現役を退いてから2年過ぎてるんだけど。

「そういうことって美羽に聞いた方が・・・」

「私はハイジャンプ専門だもーん」

そうは言っても美羽、3000メートル走の中学校記録保持者でしょうが・・・

「あ、そうだ」

美羽が思い出したように手を合わせる。

「亜希、帰りに砂糖買っておいてほしいんだけど・・・今日はこの後祐樹と会う予定だから・・・」

ひどく申し訳なさそうに、美羽は言った。
まあ、結構よくあることだ。
私だって、美羽には幸せでいてもらいたいから、いいよ、とだけ返しておく。

「ごめんね、お母さんがいきなりメールで、買って来い、なんて言うもんだから・・・」

「わかってるわかってる。林葉家にはいつもお世話になってますから。それに、いい運動になるしね」

「助かるー。じゃ、友和くんによろしくね」

美羽はそういうと、のんびりと立ち上がって、助走路の方へ歩いていった。
私と隼人君が取り残された状態だ。
そろそろ帰ろうかな、と思ったとき、隼人君が私に尋ねた。

「先輩と早野さん、家近いんですか?」

「うん、近いよ。同じマンションに住んでるんだ」

ほんとは、友和くんの家が美羽の家の隣なんだけど、そんなことは言えない。
言ったら私はこの高校にいられなくなるかもしれない。

「両親が今海外に行っちゃってるから、美羽の家族にはすごいお世話になってる」

「・・・そうですか。・・・いいですね」

そのあと何か言おうとしていたけれど、言葉にはしなかったみたいだ。
彼の悲しそうな表情は、私をドキリとさせる。
美羽の話は、本当なのかもしれない。

「ねえ、隼・・・」

「じゃあ、俺練習に戻るんで」

「えっ、ちょっと・・・」

「彼氏さんによろしくっすー」

止める間もなく、彼も美羽と同じように練習に戻ってしまった。
私はその場に立ちすくんで、深くため息をついた。



to be continued...






↓本日の日記
ずいぶん遅くなりましたが、3話です。
しばらくは、これくらいの長さのお話が続くと思います。
予告通り小説載せることができてよかったです^^



さてと、明日は地獄の3教科だ!(笑
わかっちゃいるけど小説は止めれませんv

では。塾に行ってきます。
2008-10-08 Wed 15:52
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