あなたに優しい灯火を。光を。希望を。
短編小説
シャッスv
予告通り、短編を1つ投下します。
続きからどうぞ。

登場人物

翔(しょう)某大学文学部の大学生。20歳くらい

弥生(やよい)見た目16,7の幽霊ちゃん



ここからいつものブログ

テスト、見事に撃沈。
30はあるけれど、点が低そう・・・
まあ、思っていたほどではないのでよかったです。
明日はちょっと息抜きできそうな科目なので、まあ、油断はせず、今日はゆったり勉強します(笑



では、続きから小説です。
読んでいただければ幸いです^^

ある日、幽霊に出会った。
高校生くらいの女の子で、名前は弥生ちゃん。
ちなみに、僕の名前は翔。
弥生ちゃんは、かわった幽霊だ。
まず、触れることができる。
次に、物を食べる。
幽霊にあるまじき行動だとは思わないか?
お供え物じゃダメなのかと尋ねたけれど、きつく睨まれてから文句を言われた。
「あんなのあたし達幽霊への嫌がらせだよ。おいしそうなお供え物だと余計に!
本当はみんなあたしみたいに食べられるんだけど、お供え物なんて食べると怪しまれるし。
まあ怪しまれても構わないけど、幽霊の世界じゃお供え物は食べないようにっていう決まりがあるし。
もう死んでるから、痩せたり、飢え死にしたりはしないんだけどね」
非常識な話である。食べた質量、どこへ行った。
とりあえず、普通の人間は、弥生ちゃんが見えない。
もし今、弥生ちゃんを獣のごとく襲ったって、誰にもわからない。
そんなこと、なにがあったってしないけどさ。後も怖いし。

気が強くて、少し恥ずかしがり屋の、おかしな幽霊、弥生ちゃん。
彼女を見る条件は、実は1つ。
子供の頃に、両親を同時に亡くすこと。
どちらかが死んでから、1日以内にもう片方が死んでしまうと、条件成立。
子供の頃っていう定義はよくわからないけれど、中学生まで、というのが弥生ちゃんの見解。
つまり、僕はその条件に当てはまる経歴を持っているってことだ。
両親は、僕が中学1年生の時に心中自殺してしまった。
父さんも母さんも無職で怠け者だったから僕は大嫌いだったけれど、
借金取りに追われていた、という事実は、2人が死んでしまうまで、僕は知らなかった。
僕に心配をかけたくないから、っていう理由だったら嬉しい。
僕は、そう思わせてもらっている。
ろくでもない両親だったけれど、ひどい親ではなかったから。
そんなこんなで、弥生ちゃんはひと月ほど前から、僕の家にいついている。


「なあ、両親に会いたいとか思わないのか?」
ある日、そう尋ねた。
何で弥生ちゃんが成仏しないでこの世にとどまっているのか知らなかった頃だ。
弥生ちゃんは、両親が先に死んでしまったから成仏できない、
とっても親が大好きな女の子だったんだろうと思っていた。
けれど、弥生ちゃんは急に泣き出して、僕の肩をバシバシ叩いた揚句、
僕の胸に顔をうずめてしまった。
叩かれていた間に浴びせられた罵声は、とてもじゃないけど言えない。
そしてそのまま、弥生ちゃんは泣き疲れて眠ってしまった。
結局その日、僕は質問の答えを聞けなかった。

その次の日、弥生ちゃんは突然、僕の学校を見たいと言い出した。
理由を聞いても、「気分」としか答えてくれない。
別に弥生ちゃんと一緒にいても、ほとんどの人は弥生ちゃんが見えないわけだから、
連れていくこと自体はそんなに抵抗がない。
もし見えたって、幽霊なんているはずがないと普通は思うはずだ。
けれど、弥生ちゃんの願い事を聞くってことは、弥生ちゃんの未練をどんどんなくしているってことだ。
悪いことじゃないし、むしろいいことだと思う。成仏できるんだから。
けど、詩腰嫌な気もしていた。
僕は、弥生ちゃんにほれ込んでいたんだ。

僕の通う大学は、とにかく広い。
ほんとにいろんな学部学科があって、通う生徒たちの年齢も、ほんとうにバラバラ。
僕は今日、講義を受けることになっている。ちなみに僕は文学部。
「翔君、広い学校だね・・・」
「ああ、だから迷子になるなよ」
「翔君は文学部なんだよね。講義とか聞くの?」
「まあ、聞くよ。でもつまらないから、大学見学でもしてくれば?」
「んー・・・講義聞きたいから、ついていく」
「ほんとに面白くないぞ」
「いーの!」
なんだか、楽しそうだった。

午後からは特に予定もなかったから、弥生ちゃんに大学を案内してあげた。
「サークルとかもたくさんあって楽しそう・・・」
笑ってはいたけれど、少しさびしげ。
「私も、大学に行きたかったな・・・」
ポツリ、と呟く。
「・・・なぁ、昨日の答え、教えてくれないか」
「翔君はさ、お父さんとかお母さんとか、好きだった?」
一瞬、答えようか迷ったけれど、答えることにした。
「大嫌いだったけど、大好きだった、かな。よくわからないんだよな」
「私は・・・怖かった。早くいなくなればいいのにって、思ってた」
それは、衝撃的な言葉だった。
最も弥生ちゃんの口から出そうにない言葉。
親が怖い?僕はそんなこと1度も思わなかった。
「ちいさいころからさ、暴力受けてたんだ。ドメスティックバイオレンスってやつ。
毎日、殴られたり、けられたり。食べ物をくれない時もあった。
普通の親がいる人たちが、ほんとに羨ましかった」
声がとっても小さくて、目に涙をためている。
「・・・中学に上がっても、高校に上がっても、暴力は続いた。
体に、暴力の跡が残った時もあった。
けれど・・・っ・・・誰も、・・・私を助けてはくれなかった・・・
周りにいた人たちも、先生も、しらんぷり。
そういう家庭とかかわるのが嫌だったんだろうね・・・
けど・・・本当に、・・・悲しくて、苦しかった・・・」
涙がこぼれても、地面には雫の落ちた後は、残っていない。
弥生ちゃんがどうして、両親を亡くした人間だけに見えるのか・・・
両親がいないのが、うらやましかったからなんだ・・・
弥生ちゃんの話を聞いて、僕もいたたまれない気分になって、弥生ちゃんを抱きしめたくなった。
僕よりも一回りも二回りも小さい弥生ちゃんを、そっと抱擁する。
「けどね・・・小さい頃に、1回だけ優しい人と出会ったの・・・
本人は…忘れちゃってるみたいだけれど・・・
私の腕の傷見て・・・痛そう、大丈夫?・・・って・・・
その子とは、それっきり会えなかったけれど、また、逢えたんだよ、最近・・・」
何かひっかかる言い回しだけれど、僕は黙っていた。
「『この本、あげる』って言われた。
まだ会ってから間もないのに・・・
たぶん、彼のお気に入りだったんだろうね・・・
物凄く、読み古してある本だった・・・
苦しい時は…その本を見て、元気もらって・・・
またいつか逢えるかなって、本を眺めている間だけ、幸せな気分になれて・・・
結局16の時に耐え切れなくなって私は自殺しちゃったけれど、本当に後悔した。
その子は私が死んだ4ヶ月後に、この街に引っ越してきた」
・・・なんだろう。途中、聞いたことのある話だ。
この街に?その子は、この街に住んでいるのか?
「彼は、大好きな本を勉強するため、大学の文学部の生徒でした・・・
広い広いキャンバスで、同じく本の好きな友達と、のんびり勉強しています。
怪しげな女の子にも優しくって、そして、女の子が泣き出すとなんにもできず、おろおろ」
おいおい、なんの冗談だ?
「そして彼は今、かわいいかわいい、幽霊の女の子を、強く強く、抱きしめています」
涙にぬれた瞳は、笑っていた。
とっても、きれいだった。
彼女の笑顔に、僕は見とれる。
「10年も、私を支えてくれて、ありがとう、翔君・・・」
「弥生ちゃん・・・」
僕は、ぞくっとした。
このまま、彼女は、会いたかった人にあって、
それを伝えることができたっていう未練を達成してしまった。
まさか・・・成仏・・・?
「あの本、お葬式の時に一緒に燃やしちゃったんだって・・・ごめんね・・・
いつかきっと、返そうって思ってたのに。
そして、翔君と過ごした時間、楽しかったよ・・・」
僕から、彼女はすっと離れる。
「・・・さよなら」
僕は、何をこのとき望んだんだろう。
弥生ちゃんの幸せ?
いやいや、そんなことはないはずだ。
「冗談じゃない!このまま離れるなんて都合よすぎるだろ!自分の願い事ばっかり叶えやがって!
世の中ギブアンドテイク!俺の幸せも叶えろ!」
驚いたのか、離れていく弥生ちゃんは立ち止った。
「俺は、お前が好きだ!だから・・・俺と一緒にいてくれよ!」

願ったのは、自分の幸せだからな。
断じて、弥生ちゃんの幸せじゃないからな。


「しょ、食費が・・・」
財布の中は、結構、やばかった。
次のバイトの給料日まで、あと1週間もある。
これじゃ光熱費削っても4日分がやっとだ。
「弥生!幽霊のくせに食い過ぎなんだよ!」
「えー・・・そのかわり家事はほとんどやってるんだよ?
今まで1人でやってた分、バイト増やせばいいじゃん
翔、最近疲れてないしさ」
いつしか、お互い呼び捨て。
っていうか、彼女はもう既に、僕の奥さん状態だ。
別に、子供なんていらないさ。
僕1人じゃ、彼女がもらうはずだった両親からの愛の代わりにはならないけれど・・・
せめて、1人分の愛情だけでも、彼女に注いであげたい。

「・・・とりあえず、今日から質素な料理をたのむ・・・」
「えー」


fin
2008-05-19 Mon 18:09
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